往人は聖にそっと口づけた。
口づけながらその細い肩を押し、その身を横たえてゆく。
「……ん……」
ベッドの白いシーツの上に、聖の身体が横たわる。
まるで大海原のように広がる、聖の長い髪。
往人はその唇を聖から離した。
口づけた後の聖の顔は、頬に小さく赤みが差していた。
潤んだ瞳が彼を見上げてくる。熱を帯びた、潤んだ瞳が。
その瞳の主……聖は往人と目が合うと恥ずかしそうに目を逸らす。
その仕草で、さらに愛おしくなった。
彼はゆっくりと、聖の胸に手を伸ばした。
「……んっ……!!」
触れられた瞬間。
聖は唇をキュっと引き結び、自分の胸の上に重ねられた往人の手に、己の手を重ね合わせた。
往人の手を拒まず、受け入れる仕草。
それに胸に込み上げる熱くなるものを感じながら、往人は聖の胸の愛撫を続ける。
見た目通り、聖の胸は大きかった。
そして柔らかかった。
掌に余るそれを、ゆっくりと揉み解していく。文字がプリントされたいつものあのシャツの上から。
彼の手の動きに合わせ、それのカタチが変わるたび。
聖の息遣いが、少しずつ、少しずつ乱れてきた。
聖が、あのいつも落ちついている聖が、自分の手で感じてくれている。
往人はその作業に夢中になる。
聖の肩の横に手を突き、往人は聖に覆い被さるように身を沈めていった。
右手は聖の胸に当てたまま。覆い被さる往人の胸板の上で、聖の豊かなもう片方の乳房が潰れる。
自分の胸に感じるふっくらとした柔らかい感触。
ベッドに突いた手をそのまま聖の首筋に回して顔を埋め、往人は聖の髪の匂いを嗅いだ。
掬い上げると、指の間から流れるように落ちていく黒い髪。そこから香る匂いは甘い、甘い匂い。
聖の匂い。
一日中でも、こうしていられそうだ。往人はそう思った。
そう、ベッドの上に広がった聖の髪を手櫛で梳りながら、聖の胸をこね続ける往人の首の後ろに。
細い手が回される。
女の手。聖の手だ。
それに気づいた往人は、その手の主の方を向く。
そこには。
熱で潤んだ切れ長の目と、上気して赤く染まった頬の、美しい女の顔があった。
「……聖……」
往人はその女の名前を呼んだ。
間近で見る聖の顔。
それはやはり美しく、そして今は欲情を引き出す貌だった。
見ているだけで、往人の胸は高鳴ってくる。
それこそ、心臓が破裂しそうなほど。
「……ひじ……」
聖への愛しい気持ちと、男としてこの女を求める気持ちがどうしようもなく高まってきた。
それに突き動かされるように、往人はうわ言のようにもう一度。
聖の名前を呟こうとした。
だが、その言葉は途中で遮られる。
唇を柔らかいもので塞がれることによって。
それが聖の唇だと気づくのに、数瞬の時を要した。
ギュッと往人の首を抱きしめて。
ぎこちない動きで懸命に唇を重ねてくる聖。
その行動に、往人の欲情は加速していく。
自分の本能が命じるままに。
往人は聖の唇の間に、自らの舌を割り込ませた。
その瞬間、往人の腕の中で聖の身体がビクリと震える。
しかし、しばらくすると聖も侵入してくる往人の舌に応え、自分の舌も往人の口内に差し込んだ。
おずおずと、探るように。
ぴちゃ くちゅ ぴちゃ
たった二人しかいないこの聖の部屋で。
二人が舌を絡み合わせる音がやけに大きく響いた。
少し苦しそうに眉根を寄せながら、往人の首根に両腕を回して必死に縋りつく聖。
聖の胸をまさぐりながら、頭の後ろに回した手で聖を引き寄せ、往人は貪る。
その唇を。
絡み合う舌、舌先に感じるざらざらした暖かな感触。混ざり合う唾液の味。
それらが二人の興奮をさらに高めた。
その興奮のあまり。
往人の聖の胸を揉みしだく手にわずかに力が入る。
いや、少し入り過ぎる。
その瞬間、往人と激しい口づけを交わしている聖の眉根がギュッと寄る。
それはあきらかに苦痛の表情だった。
その表情で、往人の手が止まる。
唇を離し、プハッと息を吐く聖。
そして、軽く往人を睨む。
「……そこは敏感なんだ……乱暴にやられると痛い……」
やや唇を尖らせてそういう聖が、往人は純粋に可愛いと思った。
「……スマン……」
本気で怒っているわけではないだろうが(だいたい本気で怒っていたら命が無いような気もするし)一応謝っておく。
聖はそんな往人を見、クスリと微笑んだ。
その笑顔に釘づけになる往人。
ドキリとする笑顔だったのだ。
もし出会ったときにこの笑顔を見せられていたなら……自分は一瞬でこの女の虜になっていたかもしれない。
そんな往人を知っているのか。知らないのか。
聖はまたあの笑顔でクスリと笑う。
「いいんだ。……さ、続けてくれ……」
そう言って、聖はまた唇を重ねてきた。
今度は自分から舌を差しこんでくる。
聖の舌に応えながら、往人はできるだけ優しく、力が入り過ぎないように、聖の胸を触った。
そうされると、聖の眉根が僅かに寄り、ううっ、ううっ、という切なげな声が、合わさった二人の唇の間から漏れてくる。
控え目な、聖の嬌声。
往人は、聖から唇を離した。
離れ際に唇の端から漏れ出る、交じり合った二人の唾液。
半開きの口から小さく赤い舌をのぞかせながら、じっと往人を見つめる聖。
熱に浮かされたような、蕩けたような視線で。
往人はそんな聖の視線を受けながら
聖の喉に唇をつけ
シャツの中に手を滑り込ませた。
「!!」
また、聖の身体がピクンと跳ねる。
往人は聖の喉から首筋を舐るように唇を這わせた。
「……ううぅぅぅ……!!」
鼻にかかったような聖の喘ぎ声。
とうとう堪えられなくなったらしい。
往人の舌を感じて、その美貌に泣きそうな表情を浮かべ、悶える聖。
はぁはぁと息を乱し、いやいやするように首を振る。
往人の唇が這った後に残るのは唾液の跡。
自分の唾で光っている、ぬけるように白い聖の肌。
聖に残る、自分の痕跡。
今自分は、聖の肌に自分の匂いをしみ込ませている。
そして。
「はぁぁぁ……!!」
聖の身体に触れるたびに奏でられる、楽器の音色にも似た聖の嬌声。
それらに往人は、言い知れぬ興奮を覚える。
シャツの中に滑り込ませた手が伝えてくる、聖の素肌の感触。
柔らかで、滑らかだった。
そんな感触を存分に味わいながら、往人は聖の腹部を撫で回す。
余分な肉がまったくついていない、理想的な腹部。
興奮のためか。
そこはうっすらとだが、汗をかきはじめていた。
そういえば舌先に感じる聖の味も、やや塩辛くなってきた気がする。
「んんんぁ……!!」
泣き声に似た声をあげ、聖は強く往人の大きな身体にしがみついてきた。
往人の背中に回される、細い腕。細い指。
それが往人の背中を掻き毟るように這いまわる。
往人の胸に押し付けられる、ふたつのふくらみ。
豊かで、張りがある、確かな弾力。
細くしまったウエストと、男の欲望を受け止めるのに十分な肉がついたヒップ。
聖の全てが、往人の雄を刺激する。
愛する男との接触を求め、きつくしがみついてくる美しい女の背中に手を回し。
往人は聖を抱き起こした。
聖の全てが見たい。
「……聖……」
再び女の名前を呼びつつ。
往人は。
聖の身体から、自分自身の中に確実に潜んでいる獣性を抑え付けるように、ゆっくりと。
フワリと彼女の後ろに落ちる白い布。
それはいつも彼女が身につけている長袖。
白衣を、脱がせた。
半袖のプリントシャツに、黒のスラックス。
ただそれだけの姿になる聖。
シャツの袖から覗く二の腕。シャツを内側から押し上げる豊かなふくらみ。そして下から自分を放心したように見上げてくる切れ長の目。
それらに突き動かされ、往人は聖の肩を掴み、やや強引に引き寄せてその唇を奪った。
くちゅ くちゅ くちゅ
熱に浮かされたような表情を浮かべ、激しく舌を絡み合わせる二人。
その激しさに、唾液が二人の唇の間から漏れだし、二人の唇と顎を濡らしていく。
再び熱い口づけを交わしながら。
往人は、聖の残りの衣服も脱がせていった。
プリントシャツの襟首に手をかけ、聖の身体から抜き取るようにそれを脱がせる。
聖は抵抗しなかった。
下から、飾り気の無い純白のブラに包まれた豊満な胸が現れた。
往人は興奮で震える手を伸ばす。
自分に伸びてくる手を、すがるような目で見つめる聖。
「あッ……!」
ぴくん、と小さく仰け反る。
往人に触れられてその手を感じ、聖は声を立てた。
往人は聖の胸を、今度はブラの上から愛撫する。
「ふぁぁぁぁぁ……!」
聖はまた、鼻にかかったような悩ましい声で喘ぐ。
白い素肌がほんのりとピンク色に上気し、それが男の欲望を強烈に刺激する。
往人は聖の胸に手をやったまま、唇から顎先、顎先から喉、喉から胸元とまるでナメクジが這うがごとくに己の唇を這わせた。
胸元に辿り着くと、そのまま芋虫のように聖の双丘の頂目指して登らせてゆく。
「あ……あ……あ……!」
ブラの上から往人の唇を感じ、聖の声がうわずる。
下着ごしに聖の乳房の感触を味わいながら、往人はその頂を目指した。
そして。
「あぅ……!!」
往人はついに頂に到達した。
そのままピチャピチャと音を立ててその部分を……聖の乳首があるであろう部分を舐める。
下着ごしに。
「んんんん……!」
聖はそれに快感を感じているのか。
ぶるぶると震えつつ、往人の頭に手を置いた。
顔を真っ赤に染めながら。目を固く閉じて。
下着ごしに乳首を攻めながら、往人は聖の顔を見る。
その視線に気づいたのか、聖はうっすらと目を開けた。
その瞳は、興奮で流された涙で潤んでいる。
絡み合う二人の視線。
往人の目が言おうとしていることを察したのか。
聖は見つめてくる往人に、コクリと頷いた。
それを見た往人は、再び動き出す。
聖のズボンの、ベルトに手をかけた。
それに応え、聖は腰を浮かせる。
聖のズボンのベルトを緩め、そのホックを外し。
そのまま一気に脱がせた。
聖はそれに合わせて足を動かし、それに協力さえした。
ズボンも取られ、ついに聖は下着だけの姿になる。
聖のショーツは、ブラと同じ色をしていた。
白い太股。くびれた腰。見上げてくる上気した美貌の傍らに広がる、長く艶のある絹糸のような黒い髪。
そしてブラのカップいっぱいに詰まった、豊かな胸。弾けそうなほどに張り出したヒップを覆う、白いショーツ。
ごく……。
往人の喉が鳴る。
美しかった。途方も無く美しかった。
もっと、おしゃれな下着をつけておくんだった。
聖は往人の目に自分の下着姿を晒してそう思った。
まさか今日、国崎くんとこんなことになるなんて。
こんな、こんな地味な下着。
恥ずかしくて、泣きたくなる。
もじ……。
聖が往人のそんな視線を感じたのか、恥ずかしげに身動ぎした。
両足をキュッと閉じ、そわそわと不安げに擦り合わせるように動かす。
ふるふると揺れる肉付きの良い太股。
往人はその誘惑に抗えなかったし、抗う気も無かった。
そっと、聖の太股に手を伸ばした。
「……あっ……!!」
往人の指が聖の太股の肉に触れたとき。
聖が小さな声を漏らした。
そのまま撫で回してやると、身悶えするように身体をくねらせる。
感じてくれている。たったこれだけの愛撫で、感じてくれている。
往人の心に、感動に似た気持ちと、聖を愛する気持ちが広がっていく。
白く、適度に脂肪がついて柔らかで張り詰めた太股。
まるで殻を剥いたゆで卵のようにすべすべとした肌。それは吸いつくように往人の手に馴染み、触っているだけで気持ちが良くなってくる。
聖は往人に太股を愛撫され、電気が走るような快感を覚えた。
信じられなかった。
好きな男に身体を触れてもらうことが、こんなに気持ちいいなんて。
ただ、太股を触られているだけなのに。
往人の指が、足の付け根、内股、膝を這いまわる。
それが頭の中が真っ白になるくらい、気持ちいい。
「あんっ!!」
そのとき、聖は思わず高い声をあげてしまった。
往人が聖の内股に愛撫を加えているときに、その指先がわずかに股間の肉に触れてしまったが故に。
その声が大きかったのか。
往人は、やや驚いたような目で彼女を見詰めてくる。
その視線が。
聖の顔がカァっと熱くなる。
聖の羞恥心を刺激する。
(恥ずかしい……)
頬に感じるシーツの感触。
聖は横を向いて頬を染めている。
自分の喘ぎ声を聞いて、往人はあんなに驚いている。
ひょっとしたら幻滅されたかもしれない。
いやらしい女だと思われているのかもしれない。
触られているだけで、こんなに感じるなんて。
ふいに生まれたそんなつまらない想像。
だが。
そんなつまらない想像に、加速度的に不安になってゆく。
いやだ。嫌われたくない。
自分の想像で、泣きたくなってきた。
じわ……
両眼に、涙が溢れてくる。
今までの涙とはあきらかに別種の涙。
不安による悲しみの涙だった。
往人の手が凍りついたように止まった。
突然、聖が泣き出したから。
自分の下で、横を向いて涙をこぼしている。
手足を縮め、丸くなって。
何故だ。
その姿に、往人は自問する。
何か、聖を傷つけることをやってしまったのだろうか?
聖……聖……!!
もしかして本当は触られたくなかったのか?
往人は思い返す。聖の今までの表情を。
その中に、本当は自分の行動を嫌がっている色はなかっただろうか、と。
欲望に任せて、聖の気持ちを無視していなかっただろうか、と。
自分は、本心から聖を、聖だけを求めている。
だが、その気持ちは本当に聖に伝わっていたのか?
……。
………。
自分は、聖が欲しい。
しかし、その前に聖を喜ばせてやりたい。
聖が喜んでくれないなら、意味が無い。
……。
………。
…………。
「……そんな目で見ないでくれ」
そのまま、往人の心が自己嫌悪の海に沈みかけたときだった。
往人の腕の間で。胸の下で泣きながら横を向いている女……聖がポツリと呟くように言った。
その声に、往人は引きつけられる。それだけの気持ちが込められていたから。
聖は続ける。
泣きながら。
「……キミに触れられると……その……」
時折、涙に声を詰まらせながら。
「……気持ち良くて仕方ないんだ……」
聖は俯きながら。
「だから……お願いだから……」
消え入りそうな声で。
「私のことを……いやらしい女だと思わないでくれ……!」
彼女の本心を口にした。
その、次の瞬間だった。
聖がビクンと背中を震えさせ
「ひゃうっ!?」
その美貌に似合わない可愛らしい声をあげたのは。
いきなり、目尻にキスされたために。
口づけた本人……往人の唇が触れた目尻を押さえ、顔を向ける。
目を丸くして。
そんな様子を、往人は笑って見つめていた。
そして。
笑って、続けた。
「な〜にが『いやらしい女だと思わないでくれ』だ」
やや、口ぶりを真似つつ。
往人は聖の耳にその口を近づけて。
少し、悪戯心が頭をもたげてきた。
こんなことを言ったら聖はどんな顔をするだろう?
その顔を、見てみたい。
そんな、意地悪な好奇心。
相変わらず目を丸くしている聖のその耳元で。
往人はこう囁いた。
「……いやらしいのはお前じゃなくて……俺だ……」
耳にかかる息で、聖の肩が小さく震える。
それを可愛らしく思いながら、後を続ける。
「それに……」
さらに、耳に唇を近づける。
そのまま、聖の耳を舐れそうなほどに。
「これからお前に、もっといやらしいことをするんだぞ?
……これぐらいでいやらしいと思われると困るんだが?」
……もっと……いやらしいこと……
その言葉を言ってすぐだった。
聖の顔が真っ赤に染まったのは。
耳まで、真っ赤に。
メチャクチャ可愛い。
飾りっ気も何も無い言葉だが。
そんな聖の反応に、往人はただそう思った。
そんな聖を見ていると。
もっといじめてやりたくなる。
もっと、恥ずかしがらせたい。
恥ずかしさで、泣きそうになっている顔が見たい。
好きだから。
聖が本当に好きだから。
そんな聖をどうしても見てみたいのだ。
「……なぁ……」
とても耐え切れるものではない。
その誘惑に突き動かされて。
往人は囁いた。
「……イヤか……?」
その瞬間。
聖の目に。
怯えとも、戸惑いともつかない色が浮かび上がった。
まるで、雨の中で捨てられた子犬のよう。
聖のそんな表情が、往人の加虐心を刺激する。
もっと意地悪をしてみたい。
往人はわざと、いかにもがっかりとした表情を浮かべてみる。
溜め息もついた。
それだけで、聖が親猫に見捨てられた子猫のような表情になったのが見なくても分かった。
続ける。
「そうか……」
そのまま、イヤなのか、と続けようとした。
だが。
「イヤじゃない!!」
その前に、焦った聖のその言葉が、往人のその先の言葉を言わせなかった。
その言葉を聖が口にした瞬間。
二人の時間が停止し、二人はしばし見つめ合った。
そしてしばらくして。
聖の顔が火が出そうなほどに赤くなってゆく。
それに気づいた往人は、横を向いてくくく、と笑った。
その様子に、聖も気づいた。
自分がからかわれたことを。
「冗談……だったんだな……?」
悔しさと恥ずかしさが入り混じった声。
眉根を寄せて、往人を睨む。
うーという唸り声すら聞こえてきそうなその視線。
怖くはない。むしろ可愛い。
普段の聖からは考えられないけども。
だからもっと見ていたい。
でも。
あまりいじめるのも可哀想だとも思う。
「ゴメン」
真顔になり、謝罪の言葉を口にしながら。
往人は聖に顔を近づける。
涙に濡れた聖の顔に。
「……ひどいやつだな……キミは……」
眉根を寄せたまま、口を尖らせるようにして往人を非難する。
まるで子供のようなそのしぐさ。
普段の聖とのギャップにさらに強まる愛おしさ。
そんな聖を見ていたら。
またいじめたくなってきた。
しかし、今度はそれをぐっと堪える。
自分は少しサドの気があるのかもしれない。
今まで自覚したことはなかったが。
聖をいじめるという誘惑に心惹かれながらも、それを精神力で打ち切り、往人は再び囁いた。
「……悪かった」
聖は、怒っていた。
この男は、自分が困るところを、泣きそうな表情を浮かべるところを見たがっていたようだった。
正直腹が立った。
自分のせいでがっかりさせてしまったのかと、本気で心配したのに。
許せない。
許せないけども。
……憎めない。
それ以上に、この男のことが好きで好きでたまらないから。
だから。
「私も……」
それに気づいた往人がこちらを見てくる。
往人が見ている前で、ゆっくりと喋りだした。
「さっきは突然に泣き出してキミを困らせたから……」
往人の視線を感じながら、言葉を続ける。
「これでおあいこだな……」
言って、往人の目を見つめ返し、聖は微笑んだ。
また、あの笑顔だ。
聖のこの顔を見ていると、聖が欲しくてたまらなくなる。
もう、この気持ちは抑えきれない。
往人は聖のブラの肩紐に手をかけた。
途端に指先から伝わってくる聖の身体の強張り。
聖も緊張している。
往人の手がブラに伸びてきた。
聖は緊張で身を強張らせる。
これから、往人に胸を見られる。
往人の前に、本当の意味で素肌を曝け出す。
恥ずかしい。
でも。
往人に……大好きな男に見られるのなら……それは喜びだ。
本音を言えば、このまま何も言わずに聖のブラジャーを取ってしまいたい。
今すぐにでも。
でも、聖が身を強張らせているのだ。
その前に何か言ってやるべきだろう。
何と言ってやればいいのか。
聖を見る。
聖が、見つめ返してきた。
国崎くんが、私のブラに手をかけたまま、じっとこちらを見ている。
……たまらなく嬉しい。
私が身を強張らせているのを感じて、待ってくれているんだ。
聖は、往人のそんな心遣いが嬉しかった。
俺と聖の視線が絡み合った。
いつ見ても、綺麗だが、中には強く秘めたものを感じる瞳。
今まで佳乃の親代わりとして、妹を強く支えてきたことが分かる瞳。
俺が好きになった瞳。
聖の瞳を見るだけで、胸から湧き上がってくる多くの想い。
往人は、聖の目を見つづけた。
往人になら、見せてもいい。
往人になら、あげられる。
聖は、自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じ取った。
自分の顔がどうしようもなく紅潮してくるのが分かる。
そして。
コク……。
彼女は、頷いた。
聖は、頷いた。
往人の目に向かって。
それを往人は、肯定と受け取った。
聖の細い肩。
女性として、最低限の、無駄な肉がまったくついていない肩。
触っただけで壊れそうな肩。
その上を通っているブラの肩紐に添わせて……
そこで聖の強張りが一瞬強まったのを往人は感じた。
しかし。
往人は止めずにそのまま聖の背中に手を回し、ホックを外した。
その瞬間、ブラによって窮屈な体勢を強いられていた聖の胸が解放される。
興奮で手が震えそうだ。それを必死で抑え付けながら、肩紐をその肩から外し……。
ブラのカップを胸から外すとき、往人は自分の心臓が爆発しそうなほどに鼓動を刻んでいるのを自覚する。
もう少し。もう少しで……。
「ああ……」
とうとうブラを往人に取られるとき。
聖はなんとも悩ましい声を漏らした。
プルンと震えて、聖の豊かな胸が外気に晒される。
仰向けに寝ているのに、少しも型崩れしていない。
見事な紡錘型。
スレンダーだから実際のサイズは目立つほどではないだろうが、Eはありそうに見えた。
大きいのに、少しも垂れていない。
理想的なカタチを保っている。
理想的な美乳だった。
鎖骨の中央の窪みと正三角形を描く位置にある聖の乳首の色は……薄い小豆色だった。
舐めれば甘い味がしそうだな……。
往人は見惚れるあまり呼吸すら忘れた頭の片隅で、そんなことを考えた。
乳輪の幅もそれほどでなく、なおかつ小粒の乳首。
往人は唾を飲み込んだ。唾液が溢れてくる。
吸ってみたい。この乳に、唾液を塗りたくりたい。
男ならだれでもそう思うはずだ。
彼は手を伸ばした。
「ンンンン……」
裸の乳肉に、往人の指がめり込んでいく。
ブラの上からとは比べ物にならないくらいの、手に吸いつくようなその感触。
加えた力に応じた、相応しい力で指を押し返してくる。素晴らしい弾力だった。
往人は聖の両の乳房を、下から掬い上げるように、絞り込むように揉んだ。
そのたびに聖は切なそうな表情を浮かべる。
それが往人には嬉しかったし、興奮を刺激した。
だから。
「お前……服の下に、こんなに美味しそうなオッパイを隠してたんだな……」
思わず口をついて出てくるそんな言葉。
「お……美味しそう……?」
往人が食い入るように自分の裸の胸を見ているのを感じ、羞恥と快感を感じながら、荒くなった息を抑えるように、聖。
彼女は続けた。
「キミは……な……何を基準にそんなこと……アッ!!?」
だが、その言葉は最後まで続かなかった。
突然往人が、その先端を、聖の薄小豆色の乳首を、パクリと咥えたから。
そのままもぐもぐと口を動かし、ちゅうちゅうと吸いはじめた。
まるで母乳を飲む赤子のように。
「ア……ア……ア……!!」
聖の目が、快感でとろけていく。
国崎くんが私の胸を……オッパイを吸っている。
まるで赤ちゃんみたいに……。
国崎くんが……国崎くんが……国崎くんが……!!
その事実を認識するたび、腰のあたりから痺れのような甘い感覚を感じてしまう。
往人が、聖の乳首を吸っている。
チュッ、チュッと吸い上げながら、舌先でその小粒の乳首を舐め回す。
ときおり唇で甘噛みしながら。
吐き出された唾液が、聖の乳房全体をべとべとにしていく……。
「……母乳は出ないのか?」
チュパ、と乳首から口を離し、往人は言った。真顔で。
何を言っているのだ。この男は。
「で……出るわけないだろ!!
ま……まだ妊娠していないのに!!」
胸の上から自分を見上げ、真顔で馬鹿なことを言ってくる男に、聖は快感で乱れている自分を誤魔化すかのごとく大声で返答する。
「……わからないぞ?」
聖の豊満な両胸を鷲づかみしながら往人。
しぶとい。
「わかるッッ!!」
鷲づかみにされ、乳房を往人に好きなように弄られているが、聖はすぐさま切り返す。
いくら乳房を弄られても、今の聖の乳首から、母乳が噴き出してくることはありえない。
でも、往人はまだあきらめていないようだった。
「んあっ!!」
聖がぴいんと背中を逸らした。
往人が、強く乳首を吸い上げてきたからだった。
ちゅーっ、ちゅーっという音すらさせて。
意地でも母乳を吸い出してやる。そんな意図すら見える吸い方だった。
そんなに、自分の母乳が飲みたいのか。
聖の頭の中が真っ白になってゆく。
ちゅぽん。
濡れたモノが離れる音。
往人が思う存分吸いまくっていた乳首から口を離したのだった。
これだけ吸っても出ないのか……
彼は激しく残念だった。
しかし。
これまでの刺激で固く尖った薄小豆色の乳首。
自分に乳房を好き放題に弄りまわされ、快感でうっとりととろけ落ちそうになっている瞳。
五指に余る大きさで、絞り込むように揉み潰せる乳房。強く握っても、しっかりと押し返してくるその弾力。
それは、彼の理性を消し飛ばすには充分過ぎる誘惑の道具。
右手の中でふにふにとした感触を伝えてくる乳房の、その頂を人差し指と親指でくりくりと弄ってみた。
「フ……フゥゥゥン……!!」
それに聖がギュッと目を閉じ、鼻に抜けるような甘く切ない喘ぎ声を漏らす。
そんな聖を見ていると。
自分の理性が限りなくあやしくなってくる。
いや、もうすでに吹っ飛んでいるのかもしれない。
往人は聖の両の乳房を中央に寄せ、その両乳首を一度に吸った。
ぴちゃぴちゃと舐めしゃぶりながら。
「ウウッ……!!ウウン……!!」
聖は胸を突き出すように身を反らし、往人の頭髪をくしゃくしゃとかき混ぜるようにその頭を撫でた。
今自分の乳房が、往人の唾液塗れにされている。
往人の唾液の匂いがつけられている。
往人の女にされている。
頭の中を駆け巡っていくそんな言葉。
それが聖の体を熱く火照らせていく。
もっと……もっとしゃぶって!!
往人の唾液でべとべとになった聖の乳房が、ぬらぬらといやらしい光を反射していた。
その乳肉も、薄小豆色で小粒の乳首も、乳首と同色の乳輪も、往人の唾液に塗れている。
濡れていない場所など、一つも無い。
今、自分はこの女の乳房に、自分の印をつけた。
無数に残る、赤い跡。往人の唇が這った跡。
それは乳首だけでは無い。乳肉全体に、覆い尽くすように広がっている。
そんな乳房が、聖が身じろぎするたびに左右にゆさゆさと揺れた。
まるで柔らかな突きたての餅のように。
理性が、どんどん飛んでゆく。
乳房に加えられた愛撫で、呼吸を乱している聖。
上気し、うっとりとした視線でこちらを見てくる聖の細い顎に手をかけ。
往人は、また唇を奪った。
まるで貪るように。
クチュクチュ……。
舌を侵入させると、聖はそれに応えて音を立てて絡み合わせた。
わざと唾液を吐き出し、聖の口の中に送り込む。
「んんん……!!」
聖はコクコクと喉を鳴らしてそれを飲んだ。
聖を俺のモノにしたい。
その欲望だけが、往人の身体を支配していく。
「ん……はぁ……!!」
くちゃ……。
合わせていた唇を離す。
激しいキスでもはや溶け崩れたように潤んだ瞳の聖と往人の舌先を繋いでいた銀の糸……唾液の糸が聖の口腔内に流れ落ちていく。
往人の下にいる女は、それをのぼせたような表情で美味しそうに飲む。
聖に自分の唾液を飲ませている。
それにどうしようもない興奮を感じながら、往人は聖の頬に当てた手を首筋へ、首筋から胸を通ってわき腹へ移動させ
聖がそれを感じてまた身を固くした。往人の意図が分かったのか。
でも、もう止めることはできない。
往人は、最後に残った下着に手をかけた。
聖の秘所を覆う、たった一枚の小さな純白の布きれに。
これを取ってしまえば、聖は生まれたままの姿になる。まったくの無防備な姿に。
見たい。
そんな聖を見たい。
最後の一枚に手をかけられても、聖は身を固くするだけでまったく抵抗しなかった。
しかし、仮に抵抗されても、自分を抑えられるかどうか、今の往人には自信が無い。
けだもののような自分が、今すぐこの下着を剥ぎ取ってこの女を強引に犯し尽くしてしまえと命令する。
だが、それを最後に残った根源的な理性がかろうじて押しとどめる。
今の往人は、そんな危ういバランスの上に成り立っていた。
やがて。
ついに往人の指に力がこもる。
まるで少年のように高鳴る往人の心臓。
ますます固くなる聖の身体。
そしてそのままそれを一気に抜きとってしまう前に、往人は聖の顔を見た。
聖は、怯えたような、期待しているような、そんな不思議な表情を浮かべ、往人を見つめ返してきていた。
そんな聖の表情に。
往人の胸にある疑念が浮かぶ。
だが、すぐにまさかそんなことは無いだろうと彼はその疑念を打ち消した。
スル……。
丸みのある尻肉を先にくぐらせて、ゆっくりと下へと抜きとっていく。
「ああ……!」
あらわになっていく、すっきりとした腹部のラインから収束するように細くなっていく下腹部のライン。
男とはまるで違う、柔らかなライン。
そのラインの終点に。
綺麗な逆三角のカタチに整えられた陰毛があった。
決して濃くはなく、かといって薄くもないその陰毛の下にひっそりと息づくのは聖の性器。
割れ目の間から、濃い赤色の肉がはみ出していた。
ヌチャ……。
脱がし取る下着に付着する透明な、やや白濁した粘液。
愛液だ。
もう、相当に濡れていた。
性器には直接愛撫を加えていないというのに。
「……もうこんなに濡れているのか……」
思わず、ポツリと呟く。乳房や口唇への愛撫だけで、こんなに濡れるなんて。
トロトロと愛液を溢れさせる聖の秘所を見つめながら、往人は大きな感動を得た。
「ううう……」
じっと自分の性器を見詰められていることを感じ、涙を浮かべながら横を向く聖。
往人の視線を遮るものは一つも無い。
すべて、あますところなく見られている。
しかもこんなぐちゃぐちゃに濡れた性器を。まだ直接触られてすらいないのに。
消えてしまいたいほど恥ずかしい。
でも。
見られたい。
矛盾しているように見えるが、それは聖の真実の心の声だった。
聖が濡れている。自分に抱かれるために。
聖の膣口。子供を産むための穴。そして男を受け入れる場所。
そんな場所を、聖も持っている。
当たり前のことだが、往人はそれが不思議で……
欲情した。
こんな女神みたいに美しい女なのに……やはり子供を産む機能がある。
そんな当たり前のことに、やけに……無性に興奮した。
「アゥッ……!!」
そのとき。
聖が苦鳴に似ているが、それとは決定的に何かが違う声をあげた。
往人が堪えきれず、ゆるく開いた聖の股間に顔を割り込ませ彼女の性器をペロリと舐めたのだ。
フゥ……フゥ……フゥ……!!
そのまま、まるで砂漠を幾日もさ迷い続け、ついにオアシスを発見した旅人のように。
往人が聖の性器に噛り付く。
膣口から溢れてくる愛液を啜り上げ、喉を鳴らして飲み下す。
甘い果実を味わうが如く、聖の太股に手を回し、その秘唇に顔を押し付ける。
「ウ……アアアア……!!」
陰核に当たる鼻の感触。割れ目を舐め回す舌の感触。
そして男に自分の愛液を飲まれているという事実。
それらが気を失いそうになるほど気持ち良い。
往人の舌が聖の秘裂を這い回るたび。
聖の意識は飛びそうになる。
その白い裸体を汗で濡らし、長い髪を振り乱す。
あまりの快感に、はしたなくもその白く、充分に柔らかい肉をつけた尻を浮かせる。
まるで狩人に追い詰められる小鹿の如く、聖の女体が少しずつ追い詰められていく。
その頬と同じように、彼女のまるで雪のような白い肌が薄いピンクに染まっていった。
ず……ずずず……!!
だが往人はそんな聖の様子など知らぬように、まるで飢えた犬のごとく聖の性器を舐め続けた。
溢れ出てくる愛液を吸い上げ、飲み込む。
まるで国崎くんに食べられているようだ。
聖は思う。
自分の秘所を貪られている。一番恥ずかしい部分を、しゃぶられている。
ぐっ。
太股の内側を左右に引っ張られる感触。
往人が何をしているのか。
それはすぐに分かった。
……ああ!!
国崎くんが私のアソコを左右に開いて、お腹の中を覗いている!!
それが分かった瞬間。
彼女の羞恥心が絶頂に達する。
見られている。
自分ですらよく見たことがない場所を。
性器の奥。子宮の中。
……自分の身体の中を見られている……!!
……あかちゃんが入るところを……!!
「ふぁ……!!」
涙が溢れてくる。
消えてしまいたいくらい恥ずかしいのに、それがもがきたくなるくらい気持ち良い。
大きな波が押し寄せてきていた。
浮き上がる尻。
紅潮した頬。
半開きの目。何も映していない瞳。
Oのカタチに開き、はあはあと熱い息を吐いている口。
乳房と同じように唾液に塗れ、濡れて赤く光っている唇。
聖が今昇りつめようとしている。
それが往人にも分かった。
俺の指と舌で、聖がイク……!!
頭がそれでいっぱいになる。
聖をイカせたい……!!
そして往人は、今までまともに弄らなかった聖の肉芽を口に含んだ。
「!!」
その瞬間
聖の目が大きく見開かれ
その身体が若鮎の如く跳ねる。
背筋をピーンと反らせ、ビクビクと痙攣する。
「ア……はぁ……!!」
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