「藤ねえの脚……ホント綺麗だ……」

わたしの素足を撫で回しながら、士郎はそんなことを言う。
ちょっと嬉しい。

学生時代ずっと剣道をやってきたから、走りこみやらなんやらで筋肉はついている。
だから、身体の線には密かに自信あり。

……おっぱいは小さいんだけど。

きゃ!

お菓子を与えてもらった子供みたいに、わたしの足を口元に持っていった士郎が、わたしの足の指をペロペロと舐めてるっ。
ちょっとちょっとっ、いくらなんでも足なんか舐めたら汚いよ!

そういったんだけど、まるで聞く気配ナシ。

うー。もっと綺麗に足を洗っておけば良かったあぁぁ……。
事前に分かってれば、お風呂のときにもっと念入りに洗ってたんだけど。

寝込み襲われるなんて思ってなかったもの……。

士郎は本当に美味しそうにわたしの足を舐めている。
汚れが溜まりやすい足の指の間まで、念入りに。
まるでキャンディーでも舐めてるみたいな感じだった。

士郎は優しいから、こういうことを平気でやってくれる。
士郎に言わせれば、藤ねえの身体なんだから汚いハズがない、らしい。

嬉しいけど、そこまで好きでいてくれるなんて、なんだか不安になっちゃうよ。
わたし、なーんにもできないのになぁ……。

家事ほとんど士郎にまかせっきり。
御飯も満足に作れないし。
士郎より8つも年上なのに。
完全にこのおうちの居候。

他にもっといい子がいるはずなのに、わたしを選んでくれて。

もっと若くて、家事もできて、何でもできるいい子が。
士郎なら、その気になればそんな子を彼女にするのも無理なことないと思うのにな。

嬉しいけど、ちょっと不安。

士郎の舌がわたしの足を這い回っている。

足指から、足の甲へ。
足の甲から、足首に。

足首から、膝に、太ももに、内股に。

だんだん、だんだんあそこに士郎の舌が近づいてくる。

そして。

「はうううっ」

とうとうぞろりとあそこを舐め上げられて。
快感で身をくねらせて、身を反らせるわたし。

キュっと目を閉じて、くい、と上向き加減に顎を反らせる。

そこでうっすらと目を開けると、鏡があった。

そこに映っているのは半裸のわたし。

士郎に股間に顔を埋められて、目に涙を浮かべた真っ赤っ赤なお顔で、口を押さえてあえぎ声を我慢しているわたし。

弟の前で足を開いて、弟にヤられちゃうお姉ちゃん。
鏡の中の女の子は、そんな子なのだ。

お姉ちゃんなのに。
弟に圧し掛かられて。挿入されて。
好き放題に子宮を突き上げられて。

それで、中出しされて。
おなかの中に士郎の遺伝子ばら撒かれて。
あかちゃんの素を植えつけられて。

今日は大丈夫な日だけど、危ない日にそんなことされたら妊娠しちゃう。
士郎のあかちゃん孕んじゃう。

わたしの卵子が士郎の精子と結びついて受精して、ひとつになって、おなかの中で育って、この平らなおなかがパンパンに膨れて……

おっぱいからお乳が出るようになるの。

妊娠したら……おっぱい大きくなるかな……?
士郎のあかちゃん孕んだら、士郎、もっと優しくしてくれるかな?

あかちゃんがいるおなかを優しく撫でてくれたり。
おなかの音を聞いたり。

……けっこんしたら、ちゃんとわたしが士郎のお嫁さんになったら、士郎の子供を沢山、たあああぁくさん産んであげるね……。

それで、そのときは、とっても仲良しのお父さんとお母さんになろうね。

士郎にあそこを舐めまわされて、頭の中がぐーるぐる。
気持ちよくて、ぞくぞくして、興奮して。

「ふえええ……」

やだ。声が我慢できない。
両手で力いっぱい口を押さえるわたし。

士郎の舌が、まるで蚯蚓か蛞蝓みたいにわたしのあそこの中に入ってくる。
それがわたしのなかを、無遠慮に嘗め回してくる。
士郎の舌や鼻の頭がわたしの陰核や陰唇をなぞるたび、電撃を浴びせられたみたいな快感があった。

このままじゃ、口を押さえてても声が出ちゃう……!

やめて、士郎、やめてよっ……!

片手で、わたしのあそこに顔を埋めている士郎の頭を押し返す。
ちょっと癖のある、士郎の短い髪の毛に指を埋めて、ぐいぐい押した。

すると。

わっ。

押してるわたしの左手が士郎に掴み取られ、敷いてるお布団の上に押し付けられた。
邪魔するな、ってことらしい。

うー。士郎、絶対根に持ってるよっ。
さっきわたしがやったこと、絶対に根に持ってるよっ。

いじめる気だっ。わたしをいじめる気だっ。

士郎のっ……いじわるっ……!

残った右手で口を押さえて、わたしは涙をポロポロ零しながら声を堪える。

(んん〜っ、うむんん〜っ!)

声が出せないから、思うように声が出せないから。
感覚が倍になり、士郎の愛撫がより気持ちよくなってしまうわたしのからだ。
普通に触られるより、5倍も10倍も気持ちいい。

ぴちゃぴちゃと犬みたいに舐めながら、ときおり溢れ出した愛液をまるで花の蜜でも吸うみたいに啜り上げる。

ああ、愛液飲まれてる……士郎に飲まれちゃってるよぉ……。

「美味しい……美味しいよ藤ねえ……」

ずずっ。
士郎がわたしのアソコに口をつけ、愛液を啜り上げる。

(んんん〜っ!)

身体が仰け反って、腰が浮いちゃう。
声を抑えて悶えるわたし。そんなわたしに

「指入れるよ、藤ねえ」

ひぅっ!

ずぶっ、と士郎が指を入れてきた。
指を入れられて、膣内を探られる。

抜き差しされる。クチュクチュという音がいやらしかった。
されるがままなわたし。

「……藤ねえ……こんなに濡らしてさ……」

どのくらいそうしていただろうか。
やがてちゅぴ、と指が抜き取られた。

抜き取られた士郎の指は、わたしの愛液で濡れている。
身を起こし、私の頭の横に手をついて、覆いかぶさるようにわたしに近づいて、その濡れた指を、わたしの頬に近づける士郎。

「藤ねえ……」

その指でわたしの頬をそっと撫でる。
自分の愛液をほっぺに塗られるわたし。
わたしはその行動にときめいてしまう。
男っぽさを感じちゃったのだ。

……士郎は8つも年下なのにな。

「……入れていい?」

コクン、とわたしは頷いた。

それを見て、士郎はまた身を起こす。
身を起こし、邪魔な掛け布団を完全に向こうに押し遣って。
そして残った上の寝巻きを脱ぎ捨てる。
露になる士郎の引き締まった身体。

……はじめて会ったときは、ちっちゃくて、可愛かったのになぁ……。

今じゃ、もうすっかり男って感じ。

……まあ、あのときは7才だったし。

それが今じゃ……

「藤ねえ……」

士郎が、わたしの開いた脚の間に腰を割り込ませる。

弟のために、股を開くわたし。
出会ったときは、この子のためにこんなことするなんて思わなかったな。

わたしの胸くらいまでしか身長無かったくせに……。

今じゃすっかりわたしより大きくなって、こうしてわたしと男と女の関係になっている。

「士郎……」

我ながらうっとりとした声。
そっと手を回して、士郎と片手の指を絡めて手を握り合った。

士郎は残った手で自分のものを捧げ持ち、わたしの入り口に狙いを定める。
先端が、触れた。

「ん……!」

そして、入ってきた。
士郎のものが入ってくるとき、わたしは顔をキュッとしかめた。

また入っちゃった……士郎のオチン●ン。

士郎に抱かれるとき、いつも思う。

士郎が小さかったとき、一緒にお風呂に入ったときは、あんなに小さかったのに。
今じゃわたしの中を埋め尽くすくらいに大きくなっている。

「んああ……っ」

ヌチャ、ヌチャ。
動きだした。

あんなに小さかったものが、今。

「藤ねえ……気持ちいい……気持ちいいよ……」

ずっ、ずっ、ずっ。

「……士郎のオチン●ンッ。一杯になってるのっ」

わたしを牝として屈服させている。

裸の胸を押し付け合い、残った手指も絡み合わせて。
深く、深く繋がりあった。

抜ける寸前まで引き抜いて、すぐさま子宮をつきあげるみたいに深く貫いたり。
浅めのピストンで、何度も押し上げてきたり。

「くっ……先生の癖に……教え子のチ●ポをこんなに締め付けてっ……しかもこんなにヌルヌルさせてっ……
教師として恥ずかしくないのっ?藤ねえっ……」

腰を蠢かしながら士郎は言う。
ぎり、と奥歯を噛んでいるのが分かる。

「やぁ、あっ……し……仕方ないのぉ……士郎のチン●ンが気持ち良すぎてっ……」

甘い声をあげるわたし。

「……気持ち良かったらっ、こんなに牝丸出しでっ、教え子のチ●ポ締め付けるんだ?
……精液欲しがってるの丸分かりだよっ。藤ねえっ。
……そんなので教師やってくのはどうかと思うなっ」

「はぁんっ……いじわるばっかり……ひぅっ……ひどいよ……士郎」

突き上げられながら、わたしは士郎にいじめられていた。

「おまけにこんなに乳首立たせて……」

言って、水を飲む動物みたいに身体を丸めて、わたしの乳首を口に含む士郎。
そのままチュウチュウ吸ってくる。ときおりペロペロと舐め上げながら。

すぐに、わたしのおっぱいは士郎の唾液でべとべとになっていく。

「ふぅぅっ、そ、そういう士郎は……どうなのよぉ……。
高校生にもなって……そんなに美味しそうにおっぱい吸ってっ……。

あ、あかちゃんじゃないんだからぁ……」

「俺のはいいんだよっ……これはっ……大好きな藤ねえのおっぱいなんだからっ……」

ポタ、とわたしの身体に落ちる汗の粒。
わたしに圧し掛かる士郎の汗だ。

ふたりの身体は汗まみれで、どんどん熱くなっていっている。

「俺が吸ってっ……何が悪いんだよっ……」

言って、ズン、とさらに力強く突き上げる。
わたしは身を反らした。

「ひぅっ……じゃあ、わたしだって……大好きな士郎のチン●ンで気持ちよくなってっ……一体何が悪いっていうのよっ……」

半泣きで言い返すわたし。

でも、胸の中はときめいていた。

大好きって。わたしが大好きって士郎が言ってくれたから。

好き。

愛してる。

単純だけど、何より嬉しい言葉。
それは、自分が誰かに必要とされている証だから。

「好きなのっ……愛してるのっ……士郎っ」

「俺だってっ……藤ねえが大好きだっ……」

想いに突き動かされて、何も考えずに愛の言葉を口にする。
その想いが、さらにわたしを、士郎を燃えさせる。

「藤ねえ……藤ねえ……」

「士郎……士郎……」

まるでそれ以外の言葉を忘れてしまったみたいに、お互いの名前を呼び合うわたしたち。
お互いの名前を呼ばないときは唇を合わせ、互いの舌を貪るように絡み合わせ、唾液をわざと吐き出して相手に飲ませる。
そうすることで、どんどん増大する一体感。
ハァ、ハァと息が溶け合い、身体もひとつになっているわたしたちは、結合した部分から本当に一体になっているような錯覚を覚えてしまう。

ぎゅっと士郎と握り合った手は、痛いくらい。
爪が食い込んで、血が出るんじゃないかというくらい。

「……いやらしい……いやらしいよ藤ねえ……。

……目は半開きでっ、どこを見ているかわからなくてっ……舌を吐き出して、涙と涎を滲ませてっ……!

牝の表情してるよっ……!

こんないやらしい女の人とできて、俺、幸せだっ……」

「やああああっ……言わないでぇぇぇっ」

どんどん、どんどん高まっていく。

「出る……もう出るよ……藤ねえっ……!」

「出して……中出してぇ……大丈夫だから……あかちゃんできない日だから……」

快感で蕩けた頭で、うわごとのように言うわたし。
士郎はもう限界近いらしい。

わたしの顔を見つめながら、ぎりぎりと歯を食いしばって、射精を必死で堪えている。
わたしにも最高に気持ちよくなって欲しいから、我慢してくれている。

愛しさがこみあげてくる。

「出るっ……俺もういくからっ……藤ねえ……」

ぎりぎりと歯を食いしばりながら、抑えた声で叫ぶように言う士郎。

「イってぇっ……溢れかえるくらいっ……わたしの子宮に士郎の精子を送り込んでぇっ」

ぐっこぐっこと抜き差しされる士郎のアレ。
わたしたちの下半身は、止め処なく分泌されるわたしの愛液ですっかりぐしょぐしょだ。

もっと!

もっと深く士郎と繋がりたい!

わたしは本能に突き動かされるまま、士郎の腰に自分の脚を絡めて抱きついた。
そして士郎の首に抱きつき、耳元で突き動かされるまま、思いのまま、本能からの言葉を言った。

「精子欲しいっ、士郎のあかちゃんの素っ、どろどろでぐちゃぐちゃで、いやらしいわたしのあかちゃんが入る袋に、一生取れないくらいに植えつけてぇっ……!!」

ぎゅううううっ。
力一杯しがみつく。
わたしの子宮に、士郎のオチン●ンの先っぽが強く、強く押し付けられた。

もう絶対離さないっ!!
士郎にたっぷり出してもらうのっ!

士郎に精子を、わたしの子宮に入れてもらうのっ!

そんなわたしに士郎も応えて、わたしの背中に手を回して、ギュッとしてくれた。
一部の隙もない。そのくらいに密着し、結合するわたしたち。

自然に唇も合わせる。
だって、ひとつになりたいから。
士郎と繋げられるところは全部繋げておきたいから。

そのままふたり呼吸すら忘れてキスをし、窒息寸前で唇を離したとき。

士郎はわたしの耳元で言ったのだ。

「……大河!!」

その一言で、私の中で何かが爆ぜた。

士郎がわたしの名前を呼び捨てにしてるよっ。
8つも年下の男の子に、呼び捨てにされちゃってるよっ。

お姉ちゃんなのに……わたしは士郎のお姉ちゃんなのにっ。

士郎はわたしのことを呼び捨てにして、わたしのこと、お姉ちゃんじゃなくて自分の女だと思ってるよっ。
それが、わたしの頭の中に電流を奔らせる。
何も考えられなくなる……普段の立場も何もかも忘れて、士郎の女になる電流を。
それがどんどんわたしの思考力を奪っていく。
立場も、状況も、プライドさえも。

「もういくっ……だからっ……お前もイけっ!!大河ッ!!」

「はいっ……あなたっ……わたしをっ……わたしをイかせてくださいぃぃぃ……!!」

何の抵抗も無く、8つも年下の男の子に……士郎に敬語を使ってしまう。
だって。

いま、わたしは、士郎の所有物(もの)なんだものっ。

この唇もっ、髪もっ、おっぱいもっ、おしりもっ、子宮もっ、卵子もっ……!
全部士郎のためのものなんだからっ……!

わたしは自分の感覚を全て膣に集中した。士郎の求めに応じるために。

奥まで入ってるよっ。士郎の精子が出るさきっぽが、わたしのあかちゃんが入る部屋の入り口にキスしてるよっ。

湧きあがる痺れにも似た快感がわたしを包んでいく。士郎の腕の中で、わたしは牡の精子を受け取るために最良の状態になっていく。

「あ……ああ……」

漏れ出る声。
もうホントに何も考えられない。

身体が震え始める。

そしてそのとき、士郎がぶるぶるっと震え、わたしをさらに強く抱きしめ、膣内射精を始めた。
士郎の生殖器の先端から、牝を孕ませるための液体が、士郎の遺伝子が吹き出す。
1回出したのに。すごい量だった。

わたしの胎内に流れ込んでくる、熱い精液。

その、子宮を満たすドロドロの士郎の牡液を感じたとき。

わたしの視界が真っ白になった。

「イグゥゥゥ!!いっぢゃううゥぅぅ!!いっぢゃうのあなたぁぁぁぁっ―――!!」

何か叫んだ気がする。
瞬間、現実の認識が全て吹き飛ぶ。

無重力の場所に投げ出された気がして、掴まれるものに掴まろうと爪を立てた。

気持ちいい……。

ものすごく気持ちいい……。

たっぷり射精されちゃった……注ぎ込まれちゃった……。

ああ……子宮のなかに、士郎の精子がたぁぁくさん……。

いっぱい、いっぱい泳いでるよぉぉ……。

卵子、欲しい、欲しいって言ってるよぉぉぉ……。

子宮の中で泳いでいる精子の動きが感じられる気がした。

士郎の精子が「すぐに排卵しろっ、お前の腹の中に子供作るんだよっ」って言ってる気がした。

そんな妄想が、わたしをさらに気持ちよくさせる。

ああ……えっちって本当に気持ちいいよぉぉぉ……。
膣内射精最高だよぉぉぉぉ……。
士郎に種付けされるの……ものすごく嬉しいよぉぉぉ……。

長引く快楽の余韻。
最初は何も分からなくなるくらい気持ちよかったけど、だんだんそれも落ち着いてきて……

わたしが現実に戻ったときには。

士郎がぐったりとわたしの身体に覆いかぶさっていた。
汗ばんだ身体を脱力させ、そのままわたしに預けてきている。

……重いな……。
けど、これも心地いい。

わたしの膣の中には萎えかけてはいるけれど、士郎のオチン●ンが入ったまんま。
わたしにオチン●ンを入れたまま、背中を上下させ、汗ばんだ身体を預けてくる士郎。

士郎の額に浮かぶ汗の粒が、一仕事終えた男って感じをさせていた。

じっと見ていると、それに気づいたのか、士郎は顔を上げて

「……悪い。重かったろ、藤ねえ」

いつもの口調で言って、ゴロリ、とわたしの横に移動した。

……あんっ。
別に圧し掛かったまんまでも良かったのに。

そのときに、ずるり、とわたしの膣から士郎のオチン●ンが抜けた。
途端、栓をされていた精液が逆流してくる。

やだ、士郎の精子が……!
股間を押さえるわたし。

どうして子宮の中で泳ぎ続けてくれないんだろう?
ちょっと悲しかった。

「……藤ねえ?」

士郎が身を起こし、わたしを覗き込む。
あそこを押さえて身体を丸めているわたしを。

「垂れてきちゃったの……」

か細い声でそういうわたしに、士郎は無言で枕元のティッシュの箱からティッシュペーパーを数枚抜き取り、渡してくれた。

「ありがと……」

受け取ったティッシュで垂れてきた精液を拭く。
士郎の精子をティッシュで拭き取って捨ててしまうのはもったいない気がしたけど、このままじゃお布団が汚れちゃうし。

わたしが垂れてきた分を拭き取って、ゴミ箱に入れると、士郎が隣のお布団を見ていることに気づいた。

「……どうしたの?」

士郎が見ているのは桜ちゃんが寝ている隣のお布団。
桜ちゃんはあいも変わらず向こうを向いて、すぅ、すぅと寝息を立てている。
そんな桜ちゃんを、士郎はじっと見つめていた。

……正直、あんまりいい気はしない。
終わった後に、他の女の子を見るなんて。

「いや……桜が起きたんじゃないかと思って」

そんなわたしのやきもちを感じ取ったのか。
答える士郎の声はやや焦っている気がした。

「さっき、すごい声で藤ねえが叫んだからさ」

え……?

今度はわたしが焦る番。
何か叫んだ気がしたけど、そんなにすごかったの?

「ああ、凄かったよ。今までで一番かも。
……白目むいて、ピンと身体を強張らせて、あなたぁぁぁ、って」

かあああぁぁぁっ。
顔が赤くなるのが分かる。

うう。落ち着いて考えると恥ずかしくなってくるよ。

士郎に向かって、あなた、だなんて。
わたし、8つも年上なのにぃ……

頬に手を当て恥じ入っているわたしに、士郎は。

「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ藤ねえ。普段はもっと恥ずかしいんだから」

と、笑みを含んだ声で言ってきた。

かちん。

む、むむ。

「士郎〜〜〜〜」

ゆらり、と怒りのオーラとともに起きるわたし。

どういう意味よそれ!

「普段はもっとってどういうこと!?」

そのままわたしは士郎の両肩を掴んで、がくん、がくんと前後に揺さぶりをかける。

「わ、わわわっ、藤ねえ、ゴメンッ」

うっかり失言してしまったことに気づいたのか、慌てて士郎。
でも、そう簡単には許さないんだから。

「士郎〜!!」

噛み付いてやろうかしら。
揺さぶるだけでは飽き足らず、士郎に組み付こうとするわたし。

でも、それは寸前で止められる。

「わわわっ、騒ぐとマズイ!!桜が起きる!!」

士郎のこの一言によって。

……そうだった。桜ちゃんがいたんだっけ……!
こんなところを目撃されたら……ちょっと洒落にならないわ。

肝を冷やし、反射的に桜ちゃんを見るわたし。

……ふう、良かった。

向こうを向いて、規則正しい寝息を立てている。
教師としては不安になるけど、今のわたしたちにとってはありがたい桜ちゃんの眠りの深さだった。

「良かった……」

ころん、安心したわたしはころりとお布団の上に横になる。
一安心。バレなくて良かった。

「藤ねえ……周囲の状況忘れすぎ」

ちょっと呆れたような士郎の言葉。
むむ、何よ何よ。
確かに煩くしたのはうかつだったけど、そこまで言わなくてもいいじゃない!

そう思い、思わずふくれてしまう。

それを目にし、また失言したと思ったのか、ちょっと困ったような顔をする士郎。
そして士郎は、お布団の上から出て行こうとするかのように、むくり、と起き上がった。

……逃げる気?

……そうはさせない。

出て行こうとする士郎を、がばちょ、とタックルして捕獲する。

「……すること終わったら帰る気?
……そうはいかないんだから」

起き上がりを阻止され、今度はわたしの下になる士郎。
わたしの剣幕に、ちょっと焦り気味。
ふふ、少し気分がいい。

とどめとばかりに強く睨みつけてやる。

すると。

わたしの視線にややしどろもどろになりながらも、士郎は言った。

「いや、ほら、いつまでもここにいるわけにはいかないだろ?」

ちら、と寝ている桜に視線をやりながら。
抑えた声で。

う。

……まあ、そうだけど。
でも。

「……あと5分くらい……いいでしょ?」

このくらい……いいでしょ?

押し倒した士郎の左腕を枕に、わたしは士郎の傍で横になった。
いわゆる腕まくら。

わたしの至福の時間だ。

……すっかり逞しい身体になったね。士郎。
そっと、士郎の胸に手を這わせながら、わたしは自分の幸せな気持ちをかみ締める。

そんなわたしの様子に、士郎もまんざらじゃないようだった。

「ん……5分くらいなら……いいかな?」

「……ありがと」

士郎、ちょっとおかおが赤らんで見えるのは気のせいかな?
……ふふ。やっぱり可愛いなぁ……。

でも、今はすっかり男の子なんだよね。

ちょっと寂しいけど、お姉ちゃん冥利につきるってものもある。

それに。

今では最愛の男性でもあるわけだし……。

「士郎……」

「ん……?」

やがて、わたしは、ぽつりと言ったのだ。
呼びかけに、視線だけ向けてくる士郎に。

「ずーっと、一緒にいようね」

本心から微笑んで。
その言葉を。


<END>

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